◆◆ 高橋五山の紙芝居作品を復刻しています ◆◆
保育紙芝居の生みの親:高橋五山の紙芝居が復活
高橋五山は、紙芝居に文化財的存在としての価値を作り出そうと情熱を注ぎました。
五山は、1935 (昭和10)年、「幼稚園紙芝居シリーズ」の制作にとりかかります。
紙芝居の歴史の中で最初に出版された「保育紙芝居」として知られる「幼稚園紙芝居シリーズ」を復刻いたしました。第一巻、二巻、四巻は「幼稚園紙芝居」です。第三巻、五巻、六巻は戦後に刊行された紙芝居です。
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高橋五山 復刻紙芝居 目次
第一巻:ベニスズメトウグヒス(初版:1943年)2011・1・10発行
第二巻:ピーター兎(初版:1938年)2011・1・10発行
第三巻:なかよしのおうち(初版:1955年)2011・10・10発行【完売中】
第四巻:ふしぎの国 アリス物語(初版:1937年)2012・2・20発行
第五巻:あかんぼじいさん(初版:1953年)2013・3・15発行
第六巻:おきゃくさま(1950年紙上発表)2014・3・25発行
第七巻:けんかだま(初版:1949年)2023・3・7刊行予定
第一巻「ベニスズメトウグヒス」、第二巻「ピーター兎」は80年も前の戦火を生き延びた二作品です。「ベニスズメトウグヒス」は物資が極端に乏しくなった戦中期に考案した「はり絵紙芝居」です。シンプルな造形と明快な筋は、紙芝居の世界を広げました。「ピーター兎」は前年に日中戦争が勃発し、統制強化されていく中、昭和13年(1938)年に刊行されました。戦争とは関係のない自由で平和な作品です。第三巻「なかよしのおうち」は1955(昭和30)年の作品で、高橋五の脚本と井口文秀の画です。柔らかな筆致の絵とやさしい言葉とともに、お互いの思いやりの気持ちを伝えてくれる作品です。第四巻は「ふしぎの国アリス物語」(1937年)です。85年も前に作られた紙芝居のアリスについて特別に付録をつけることにしました。第五巻は「あかんぼじいさん」です。若返りの水をたくさん飲みすぎて、赤ん坊になってしまう笑い話です。本作品は、わがままで欲張りな隣のじいさんを登場させ、その欲深さのために失敗を犯すところが強調されています。保存されていた原画が見つかり新しく製版し直して美しく仕上がりました。第六巻は「おきゃくさま」です。1950年に「誰にもつくれるはり絵紙芝居」として紙上に発表された作品です。八場が十場面に展開する斬新な紙芝居です!!
第一巻「ベニスズメとウグヒス」
「ベニスズメとウグヒス」は、紙芝居を幼児教育に生かしたいと願い、物資が極端に乏しくなった戦中期に五山が考案した「はり絵紙芝居」です。シンプルな造形と明快な筋は、紙芝居の世界を広げました。紙質が悪く裏面に文字が書けないため、文章は別紙となってました。薄紙で戦時下を示す「決戦体制版」と記載があります。復刻版は、井草幼稚園(東京・杉並区、昭和8年創立)からお借りしてきたものを原本としました。
第二巻「ピーター兎」
ピーターみいつけた!いたずらうさぎピーターは、紙芝居の中に隠れていました…今から80年以上も前のこと。前年に日中戦争が勃発し統制強化されていく中、「ピーター兎」は昭和13年(1938)5月に刊行されました。戦争とは関係のない自由で平和な作品です。ビアトリクス・ポターの「ピーターラビット」を下敷きに高橋五山が話を再構成し、紙芝居に仕立てました。この作品は「幼稚園紙芝居シリーズ」の十一巻として発行されたものです。(復刻に際し、著作権について専門家に確認済み)
第三巻「なかよしのおうち」
【完売しました】
作:高橋五山 画:井口文秀 (十二場面)
この作品は1955(昭和30)年3月15日に出版されたものを原画から新しく製版し直し復刻したものです。
「かつて、『魚樵問答』という画を見て、もし私たちが、このように天分の境遇をとうとび信じ、希望をもって生活できたらどんなにかしあわせだろうと思った。いがみあって、罵りわめくこともなくなり、人と人は互いに信じ感謝しあって、のんびりと楽しい日をおくることができるでしょうに。せめて、この作品を見る幼児に魚樵の快活な性格にふれさせたいと希っています。」高橋五山のことばが紙芝居に書かれていました。柔らかな筆致で描かれた日本の原風景、やさしさと思いやり、作品の中に盛り込まれた願いを強く感じました。永照寺幼稚園(甲府市、昭和16年創立)からお借りしたものを原本といたしました。
第四巻「ふしぎの国 アリス物語」
作:高橋五山 画:日向眞 (十八場面)
別冊付録(A5/32頁)として、作品の解説と原文がついています。
紙芝居「ふしぎな国 アリス物語」の復刻を望む声をアリスファンの方々からいただいて出版いたしました。「ふしぎな国 アリス物語」は昭和12年(1937)に幼稚園紙芝居の第9巻として刊行されました。18枚の作品に仕上がっています。画はとても丁寧に描かれていて紙芝居だけではなく、画集としてもみていただきたいと思います。
第五巻「あかんぼばあさん」
作・画 高橋五山 (十二場面)
高橋五山が昔話『若返りの水』を紙芝居に仕立てたものです。五山は戦前に『あかんぼばあさん』(1940年発行)を、戦後に『あかんぼじいさん』(1953年発行)を出版しました。どちらも若返りの水をたくさん飲みすぎて赤ん坊になってしまう笑い話です。小泉八雲が英語に翻訳した日本童話5作品の一つに『若返りの泉』(1922・12)があります。昔話研究としても『あかんぼじいさん』を手に取っていただければ幸いです。
第六巻「おきゃくさま」
うさぎさんはお部屋をきれいに片付けて、お客様の椅子を並べました。今夜はお茶の会があるのです。「あっ、停電!」まっくらで何にも見えません・・・子どもたちが、数を楽しく認識していく紙芝居です。
8枚が10場面に展開する斬新なアイデアが盛り込まれています。
第七巻「けんかだま」
この作品は、昭和24年(1949)3月10日に高橋五山経営の全甲社から「保育紙芝居第1巻」として刊行されました。当初は8枚の作品でしたが、五山は11枚の紙芝居に構成し直しています。これは『ほるぷの紙芝居-黄金期名作選』(1984)に所収されました。8枚も11枚もストーリーは、ほぼ同じですが、11枚の作品には赤い玉のさしこみ(2枚)が取り入れられています。昭和24年当時は紙不足や印刷関係の悪条件(脚本は謄写版)で思うような出版ができなかったという事情もありますが、仕立て直したあたりに五山の作品に対するこだわりが見受けられます。本作品は両方の脚本を融合して、8枚の作品に再構成しました。画像は昭和24年版を用いました。大きさは一般の紙芝居と同様(B4判)にしました。
この『けんかだま』の原話については、これまで指摘されたことも検討されたこともないですが、「相手にするほど大きくなる」という話の根幹はイソップ物語の「ヘラクレスとアテナ」に共通しています。ヘラクレスが道を歩いていると、リンゴのようなものが落ちていて、踏みつぶそうとすると2倍の大きさになる話です。五山はこの物語を参考にして紙芝居に仕立てたと考えられます。そして、犬を主人公に、かわいらしく、わかりやすく、楽しいはり絵で表現しました。五山は折紙のもつ素材の美しさを紙芝居に取り入れてシンプルな色彩美と造形美を追求しました。
その他
◆復刻写真集『大正大震災号』
★第2845回 日本図書館協会選定図書★
2012年12月5日発売 (原本は1923(大正12)年10月14日発行)
(ISBN:978-4-9905516-4-3) 本体価格1700円
詳しくはこちらをご覧ください
◆高橋洋子編著『教育紙芝居集成 高橋五山と「幼稚園紙芝居」』(国書刊行会 2016年7月発行)
第54回(平成30年度)「日本保育学会保育文献賞」受賞